2023年9月に行われたCGWORLD企画、 Concept ArtやDigital sculptureで有名なEntei Ryu氏の講座、『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』の受講記録です。学習メモ。ボリュームが多いので4回に分ける予定です。今回はその② アートにおける「柔らかさについて」の詳細①。
まるで教科書を読んできるかのような、思考の言語化に感銘をうけました。
この記事では
fa-check-circle-o『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』での学び
をまとめています。
関連記事前回
アートの視点からみた「柔らかさ」とはの詳細解説①
前回でアートの視点からみた「柔らかさ」とは
- 自然であること
- 調和がとれていること
- 流動していること
- 生命力を感じること
この4点があげられていました。今回はそのうちの1.2ついての解説についての学びメモ。
これらを実現するために普段から何をすれば良いのか、実践的な方法について。
1.自然であること
初歩であり、一番大切なこと。
観察力!リアルな自然界に学ぼう
すべての造形作家に写実の勉強をおすすめする
写実の勉強の目的は、リアルなものを作ることを目的とするのではなく、写実の過程で情報を抽出する能力を身に着けるためのもの。現実的な表現でも抽象的な表現でも重要。
説得力のある世界観を生み出すためにも大事、裏付けされたリアルさがフィクションの世界を際立たせる。
創作の際の頭の中にある視覚情報のライブラリは、日々の積み重ねから。
優秀な作品からのインスピレーションも良いが、実際、自分の五感で体験した、自然のもの・生活から学ぶこと・参考にするものの方が多い。他者の作品はその作家の解釈や主観で作成されたもの。他者の作品ばかりをみているだけでは、自分の創作時の原材料の選別力、精査力をドンドン失ってしまう。
リファレンスを探す時は
素人のナチュラルなものを選ぶ
作家の理解(解釈)が入っている芸術的なものより、芸術な意図を持たない写真の方が良い参考情報が詰まっている場合がある。
講座では、比較参考として爬虫類の写真があげられていましたが、ナチュラルリファレンスとして挙げられていたのが
なんとグルメレポ。どうやってここにたどりつけたのか…、リファレンスを探す際のキーワードも知りたいです
参考
石垣島 グリーンイグアナ捕物帳 ~食味レポートを添えて~
もちろん、写真や動画でリファレンスを探すことも大事だが、実際に自分で見に行く、触る等の体験しに行くことも大切。
この積み重ねが、無意識に影響し、作品の豊かさを左右する。
リファレンスの別視点。常識にとらわれず想像力を膨らませよう
全然違う素材から、創作のヒントを得よう
雲を制作作成したいから、雲素材を探す。動物の毛並みを作成したいから、その動物を探す。そんな固定概念にとらわれてはいないだろうか。
全然違うものなのにジャストフィットすることもある。
GoogleやPintrestの類似画像検索機能を活かせば、思わぬリファレンスに出会えるかも!?
Entei氏が流れ雲や動物毛の流れの参考にしたリファレンスはクリームの写真だそう。
ビジュアルの積み上げを消化する、スケッチの練習をしよう
スケッチは集めた知識や技術を身に着けるために優れた方法
いざ仕事の時に集めた資料を活かせなかった経験はないだろうか。
記憶にもなく、習得も出来ていない知識は自分自身の力になっていない。
参考資料を収集しただけで、自分の身になったと勘違いしている。
必要なのは繰り返し行い、身に覚えさせること。
その後のスカルプト作業にも効果があったとのこと。
日常生活で、常にipadを持ち歩き気まぐれにスケッチされているそう。
参考
https://www.artstation.com/artwork/lR6GJV
Line is you.線の中に自分らしさを見つける
線は作者の魂の居場所。個人のスタイルを構成する。
線も生きているように進化する。彫刻もそう。
自分のスタイルを確立したいなら、まずはスケッチを繰り返し、自分らしい線にたどり着く方が良い。
2.調和がとれていること
いかに造形を調和させるかについて
リラックスしたフォーム
リラックスした柔らかい線を描くポイント。
短いタッチを描く時は指先に、長いタッチを描くときは腕を使って描く。
ゆったりとした線を描きたいなら、筆を扱う時は急がずゆっくりと長い線を描く
ブレが発生しようとも、この線はどこに向かっているか、どこで終わるか、線をコントロールすることが大事。
線が望むところから始まり、望むところで終わることが大事。
スカルプトでも、外側のシルエットをコントロールすることを常に意識することで、柔らかさを出すことが出来ている。
「ノイズ」を許容しよう、完璧主義は負担でもある
不完璧さが人間性を個性を産む。
手で描いていればブレが発生するのは自然なこと。
部分だけを観ずに、全体を見て作業をすすめる。
シルエットを調和する意識。形はシンプルであればあるほどインパクト
- 遠景から見るのは全体的なシルエット→PrimaryShape (ex:300cm離れた距離から見る彫刻)
- 中景から見るのは全体的なシルエット→SecondaryShape(ex:30cm離れた距離から見る彫刻)
- 近景から見るのは全体的なシルエット→TertiaryShape(ex:3cm離れた距離から見る彫刻)
シンプルな図形はインパクトがある
どのシルエットが良いかの正解は無いが、丸、三角、四角、五角形、六角形、八角形等シンプルな図形は
作例Dragon Mermaid
https://badzr.artstation.com/projects/XnBb9y?album_id=3849459
この作品も長方形と三角のシルエットが意識されている
作例「蛍、フクロウ、三日月」
https://badzr.artstation.com/projects/Yav2m3?album_id=3849589
円と三角形で構成されている。翼と月の間にあるネガティブスペースで抜け感と空気感を感じさせている
フォームの階層。Primary,Secondary,Tertiary
PrimaryShape,SecondaryShape,TertiaryShapeは造形物で意識する3つのレベル。
- PrimaryShape…最も重要な形。シルエット(ex:胴体、手足のシルエット)
- SecondaryShape…PrimaryShapeを細分化。シルエットに影響を与えずディテールを加え、彫刻の視覚的な流れを作成。(ex:手足の筋肉)
- TertiaryShape…上記2に更にディテールを加える。より詳細に描く(ex:皮膚のシワ)
下位のレベルの可読性が上位のレベルの可読性を越えてはいけない。
作例Forest Friends
https://www.artstation.com/artwork/ZGR5Jm
まとめ難いほどにめちゃくちゃ考えられて作成されておりました。
コンセプト、視線誘導、バランス、リズム、見る側にとっての心地よさの追求。
生き物やキャラクターにおいて強調すべき重要なポイント
キャラ性や特徴を反映させる部分
手、爪、目、鼻、耳等。これらは線をはっきりと描く必要がある。
顔や指先はキャラ性を伝えるために重要なパーツが集中している。
生で聞かなきゃ伝わらない数々の思考
講座内では、スカルプトする際にどこをどう意識しているか、ビフォー/アフターを交えての実践的な解説もありましたが、作品と作業データがあって初めて理解できる話が多く、ここの学びではその多くを省略しております。
- 大きい構造を崩すことなく下位のレベルにすすむ
- 特徴と流れを注視、緩急の必要性
- ディテールは加えれば加えるだけ良いというものではない。
- 時にはディテールを減らすことも必要
- 余白を意識することも大事
- メリハリを意識する
etc…
作り込むというのは、ディテールを調整していくことにある
今回もとてもたくさんの情報でした。今回はここまで。