Entei Ryu氏『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』受講記録③

2023年9月に行われたCGWORLD企画、 Concept ArtやDigital sculptureで有名なEntei Ryu氏の講座、『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』の受講記録です。学習メモ。ボリュームが多いので4回に分ける予定です。今回はその③ アートにおける「柔らかさについて」の詳細②。

 

全てのクリエイターが意識しておきたい話の凝縮。

 

この記事では

『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』での学び

をまとめています。

 

 講座を元に個人的に整理、解釈も織り交ぜているので、そのままの受講内容ではありません
 思考の言語化はとても難しい所ですが、Entei Ryu氏の着目ポイントや考え方はとても興味深いお話だらけ。今回受講メモとってはおりますが、半分も拾えていないような気がしています。是非機会があれば受講して生の解説を聞くのをおすすめします

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アートの視点からみた「柔らかさ」とはの詳細解説②

前回でアートの視点からみた「柔らかさ」とは

  1. 自然であること
  2. 調和がとれていること
  3. 流動していること
  4. 生命力を感じること

この4点があげられていました。今回はそのうちの3.4についての解説についての学びメモ。

これらを実現するために普段から何をすれば良いのか、実践的な方法について。

3.流動していること

流れはリズムから生まれる

作品にリズムがあるからこそ魅力的になる。

平坦なデザインはエネルギーを感じられない。とはいえ適当に配置すると作品のエネルギーが散らばってしまうため、変化をつけて流れを作る。たとえば

  • 色の明暗の変化
  • 大小の変化
  • 密度の過疎の変化
  • 急緩の変化
  • 荒い・精密の変化
  • 水平垂直、回転変化

【チラ見】Entei Ryu氏の作業フロー

直感的にリズムを適用しているのはキャラクター等生き物の造形。

デジタルスカルプトの作業の途中、ディテールを追加しすぎたと感じた氏は作業画面をスクショで撮影、2D上でレタッチし、情報を一旦整理。パーツごとに目的をもって変化をつけていっておりました。

  • 一番大きな形をとらえ、そこに沿ったディテールを追加していく
  • 余白を残すべきところを残す。すべてのディテールを描き込むことは何も描かないのと同じ

 

moco

前回のフォームの階層につながる話も織り交ざっており、全てはつながっていることを感じました。

 

観客の目はリズムに導かれ、作品の変化を読み取り、作者の意図を感じることが出来る。

動く瞬間を彫刻で捉える。幻想の中の風と熱

キャラクターが存在している空間、時間、ストーリーの中の一瞬をとらえているという意識が大事。

作品、そのポーズの作り方。

あらゆる状況を想定、落とし込んでから作品作りを行う。例えば

  • 性格
  • 状態
  • 感情
  • 体格

他にも、画面外の要素を考える。

  • 空間の温度
  • 重量
  • 速度

それらを想定することで、より説得力のある豊かな表現が出来る。

作例-Artemis- 狩猟の女神

https://badzr.artstation.com/projects/8wwgrE?album_id=3849480

 

ダイナミックな動きだけではなく、静止状態のキャラでもその表情や視線で感じさせることが出来る。

彫っている時空中にそのガイドラインを描く

絵画の構図に流動線があるように、彫刻にも流動線がある。(※講座内ではガイドラインと呼称)

全体のラインと各部位にもメインのガイドラインがあり、他のラインはメインんおガイドラインに沿う形で構成される。

直接描くわけではないが、このガイドラインは常に意識している。ある程度のポーズを決めてから考える。

  • ガイドラインは全体の動きの方向を決め、曲線的に見えることが多い。
  • 時にラインに則して、アナトミーの正確さを無視することもある
  • 既存のパーツを変形することもあれば、あえてパーツを追加することもある

【チラ見】よく使うツール

EpicPen

スクショしたものにすぐに線がひける。

力と美。造形における重心とバランス

物体に質量がある限り、必ず重心は存在する

 

参考重心のとり方はアニメーションでもよく語られる話

CGアニメーター向け【すぐ使えるメモ8】:重心

 

アンバランスは観客側に不安を与えるが、造形の場合、あえて安定していないポーズを取らせることがある。

3Dプリントする際は背景のオブジェクトで支えると言った手法をとる。

 

キャラの胴体の重心だけではなく、手足や内臓、持ち物や皮膚等各部位やパーツごとに重心がある。

物体の質量と物体間の力関係に気を使う。

創作に上次元の考え方を備えよう

あらゆるジャンルのクリエイターが自分の領域にとらわれず考えることで、自分の作品に対する新たな考え方を得ることが出来る。

言葉によってイメージを書く(1D文字→2D平面)、空間に絵を描く(2D平面→3D空間)、時間に彫刻する(3D空間→4D時間)。

 

参考Entei Ryu氏が啓発を受けた書籍(※日本語訳は見つからず)

「監督の仕事の本質は時間を彫刻することと定義できる(Enteiy氏訳)」

4.生命力を感じること

SPではなく、MPゲージで彫り、作品に感情を吹き込む

2つの創作モードを分ける必要がある。感情を注入すべきか、デザインや技術的ニーズを理性的に解決するか

二つの作業モードを状況に応じて提示できると良い。

今回はアート寄りの話なのでSPではなく、MPでという表現にしている。

 

SP/MPはゲームの概念から拝借。

MP(マジックポイント)…インスピレーション、感情

SP(スキルポイント)…技術力。

まずはディテールから!キャラクターに世界観とキャラ性を与える

裏の設定が豊かであるほど作品のディテールも豊かになる。

 

作例THE LOVERS

https://badzr.artstation.com/projects/X1ekll?album_id=3849480

始めは単に頭のスカルプトの練習から始まった創作。そこからキャラの背景、世界観を考え込むことでディテールを加えて行った作品。

「好き」が原動力、「フェチ」を最後まで貫こう

人間は本当に好きなことをしている時こそ最大のエネルギーを発揮する

もし、自由に創造できる機会があるならば、迷わず一番好きなものをやってほしい。

 

趣味は動力。繰り返しやっても飽きない。飽きないから沢山やる。沢山やるから上手になる。そしていつかその分野の達人に。

 

仕事ではどうしても、自由に選択できないことがある。

ただその中でも、自分が好きな作業に集中することでモチベーションを上げることが出来る。

作者が自分の感情に素直であることが、創作にとって非常に重要。

 

注意したいのは、同じものを作り続ける事。

常に更新したモノづくりを意識すること。

枠を突破せよ。多数派の意見が必ずしも正しいとは限らない

数多くの理論的な知識、決まり事を耳にする機会がある。
学習として有効ではあるが、絶対的な唯一の答えではないことは心に留めておきたい

 

囚われすぎると、個性やスタイルがすり減ってしまう。どんな声にも疑問を持ちながら耳を傾けるべし

全てを受け入れる前に、それが本当に自分に合うかを考えた方が良い。

moco

全く聞かないのではなく、前提を持った上で聞くというスタンスは
可能性を広げそうですね。

多くの人が集団に従う中で、自分を主張し、個性を維持するのは難しいかもしれない。

ただ、世界は広いのでどこかで受け入れてくれる。だから自分らしく生きていきましょう

座学的な解説はここまで

これらの解説が自分スタイルの作品作りを見つけるヒントになれば幸いです。といった言葉で締めくくられておりました。

創作する人すべてが心に留めておきたい考え方だなぁと強く感じることのできる講座でした。

 

次回は「Tiger Flower」のスカルプトのプロセス解説と、ライブスドローイングとQ&A

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