Entei Ryu氏『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』受講記録④

2023年9月に行われたCGWORLD企画、 Concept ArtやDigital sculptureで有名なEntei Ryu氏の講座、『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』の受講記録です。学習メモ。ボリュームが多いので4回に分ける予定です。今回はその④ スカルプト動画とライブドローイングとQ&A

 

前回までは座学的な解説が主でしたが、ここからはEntei Ryu氏の技術を直接見せて下さるという貴重なお時間。

 

この記事では

『造形の“やわらかさ”を表現するための秘訣』での学び

をまとめています。

 

 講座を元に個人的に整理、解釈も織り交ぜているので、そのままの受講内容ではありません
 思考の言語化はとても難しい所ですが、Entei Ryu氏の着目ポイントや考え方はとても興味深いお話だらけ。今回受講メモとってはおりますが、半分も拾えていないような気がしています。是非機会があれば受講して生の解説を聞くのをおすすめします

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コンテンツ

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スカルプトのプロセス解説「Tiger Flower」

作品「Tiger Flower」のスカルプトのプロセス解説回。

moco

こればかりは、動画を見ないとなんのこっちゃではありますが
ポイントだけメモしております

 

参考「Tiger Flower」

https://badzr.artstation.com/projects/X1GGwR

1.年賀状用に作成した虎の頭を流用

よく過去作品を流用しているが、最終的にそのまま使うことは無い。

2.【Photoshop】スクショを取ってPhotoshopへ。2Dでデザインの加筆、理想的な構図を探る。

    • トラと少女、どうやってバランスをとるか。どう調和させるか。重心についての考察etc
    • 2Dスケッチの段階で問題を解決

3.【ZBrush】ザックリと虎のあたりを作成

    • 先ずはシンメトリのまま作成(※頭を除く)
    • 大きいボリュームを追加する時によく使うのはCurveTubeブラシ(胴体、手足のベースもここから)
    • Dynameshで合体
    • 動物はスタンスで作成するのではなく、想定しているポーズに近い形で作成。追々作業を減らすことが出来る。
    • ザックリと虎の手足を作成した時点でポージングに入る

ザックリのイメージ的にはこれぐらい。

手と足の最低限の関節。未だガタガタでよい。(※サンプルはZBrushのDogを使用しているのでスタンスポーズだが、講座内ではある程度ポージングされていたもの)

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4.トランスポーズを使用し、ポージングを作成

    • スタンスポーズを崩してポージングを作成する時点で、前から見ても後ろから見ても動きが自然にみえるように、足の交差や腰のひねりなどをしっかり加えていく
    • 一般的に造形の完成度が高くなった後ポージングするが、Entei氏のプロセスではより早い段階でシンメトリー性を崩していく
    • その理由として、ダイナミックな造形ではシンメトリーになっている部分は本当に少ないから

5.少女のラフ作成

少女を早々に入れることで空間の中でどのような位置を占めているか、虎と人間はどのような包囲関係を示しているかを確認できる。

  • こちらも頭は流用
  • トラ同様体はCurveBrushを使って作成。
  • ポージングをある程度想定しながら作成(※シンメトリー使用していない)
  • Snakehookやトランスポーズを使用してフォルムの調整
  • 荒い状態で作成することでキャラ間のボリューム関係を調整しやすい
  • ラフを作成する際にSphereやベーシックな形状は一切使用していない。
    自分で作成したブロックアウト用のCurveTubeを使いまわしている。

 

ラフ段階の造形ポイント

虎と少女のフォームの交差に集中している。造形のガイドラインを意識して作成する

    関連記事ガイドラインは前回出てきた話

    • ラフの状態で、ボリュームを積み上げる。
    • 見えない足もざっくり作成。服とのコリジョンを意識する

    moco

    髪の毛も衣装も、髪飾りも全てCurveTube。

    ひたすら手作業でシワを追加していっておりました。

    スカルプトのポイント

    • 皺を作成する際にはメリハリも意識する。
      先ずは大きいボリュームから形成されたシェイプ。シェイプとシェイプが接する所には皺をいれ、ゆったりとしたところには余白を入れる。
    • 服の素材などを意識し、参考画像を見ながら作業をすすめる
    • 造形の仕上げで完成度を高く見せるコツは、服などのエッジで厚みを明確にする・薄い所はしっかり薄くする。
    • 髪の毛はStandardブラシ。細かに彫り込むときはDam_Standardブラシ使うことも。
    • 大きい形の場合はStandardブラシをよく使う。

      moco

      パッと見た限り、スカルプトには
      Standardブラシ
      Dam_Standardブラシ
      Snakehookブラシ
      Smoothブラシ
      の4つほどでした。

      5.トラのスカルプト

      • アナトミー(筋肉)を彫っていく
      • 今回毛は重要ではないので、毛の処理は筋肉の構造に従わせている
      • 虎の装飾(模様)もCurveTube
      • 体の模様を作る時には、横方向の幅とノーマル方向の盛り上げに気を付ける

      5.全体のスカルプト

      全体意識が非常に重要なため、一部分を完成させてから他に移るようなことはしない。

      全体を見ながら個々の要素を調整する。

       

      虎⇔少女。

      • 髪の毛も部分的に調整して、またほかの要素へと。ルールが無いように見えて、頭の中で出来ている最終構図に向けて全体を少しずつ理想的な形に修正・調整している。
      • 視覚的な重心や注目してほしい所を調整(時にはディテールを削る)
      • シルエットをチェックするためにNPR SHADERに切り替えたりもする。
        ■LightBox内にある
      • 正確さより観客への印象を大事にしている
      • 見える部分をしっかり作成していれば見えていない部分は、観客が想像で合理的に補間してくれる
      • 作品の情報をどのようにして観客の脳内に届けることが出来るかという問題
      • 選択的にディテールを追加。細かい所が多すぎると観客が疲れてしまう。
      • マテリアルで緩急、強弱をつけることも可能。強調したい所では質感のコンスラストを上げる。弱めたい所ではマテリアルの反射を減らす等、明度や彩度の調整

      moco

      圧巻の思考とスカルプト!
      言葉を失うぐらい魅入ってしまいます。

      ライブドローイング

      • ドローイングは絵描きにとっての筋トレ
      • スケッチをする際に意識しているのは、見ているものの形の捉え方(観察)、描きたいものの正確さ。
        そのままを描かない時はもちろんあるが、まずは描きたいものを描ける能力を身に着けることで、後々の制作時にリアルにするかデフォルメにするかの選択肢が増える。
      • 通勤時間では電車の中の人を描いてる

      Q:形をとらえる(観察時)に気を付けることは?

      A.大きいブラシで全体をとらえるようにしている。

      ■左のような線(実際はもっとムラがあった)

      Q&A

      Q&Aも簡略化してますので、実際の受け答えとは若干異なってます。

      Q:仕事で受けるコンセプトアートなども、動画(Tiger Flower)の造形と似たような作り方になる場合があるか?

      A.ある。大体のクライアントがEntei氏のスタイルを入れてほしい!という前提での依頼・要望が多い。

      Q:クライアントワークと創作活動の比率は?

      A.今は会社員なので、フリーランスの仕事は止まっている。フリーランス時代は、自分が自由に創作できる案件を優先的に受けるようにしていたので、クライアントと創作活動がほぼ同じ。少ない時間を有効に、集中してクオリティを高められるものを選んでいた。量より質重視。

      Q:フィギュアにするときは3Dプリントするものに直接ペイントしているのか、型取りして別の素材にしているのか?

      A.商用であれば、3Dプリントで出力⇒レジンで型取り⇒ペイント。量産品でなければ3Dプリントして直接ペイントすることもある。

      参考フィギュアの制作工程

      フィギュアの制作工程と職種@fast

      Q:会社員としての収入は除いて、個人制作のみの収入で生活するのは難しい?

      A.実際に個人制作で生活している方はいるので何とも。ただ、ZBrushを扱えるのであれば原型以外の仕事にも広げれば生活できるのではないか。

      Q:「Tiger Flower」の虎の柄、細いがレジン素材でも折れません?

      A.自分が使っている3Dプリンタでは折れなかった。

        moco

        使用しているのは「アニキュービック」とのこと。
        多分こちらのプリンタですかね?型番不明
        参考ANYCUBIC
        https://www.anycubic.com/

        Q:デジタル原型師以外の職として、コンセプトアートの他に何があると思うか?

        A.CGのキャラクター・クリーチャーアティストなど

        Q:仕事し始めのころ、コンセプトアートの依頼をされた時に「ちゃんとこなせるか?」等不安はなかったか?

        A.当然あった。特に日本語。シナリオを読むのに時間がかかったり、理解が正しいのか等。

        コンセプトアーティストは絵を描くよりコミュニケーション。相互理解を深める事がポイントになる。絵はビジュアルで伝えるツールの一つである。

        Q:ArtStation。女の子が多い印象だが理由はあるか?男の子作る?

        A.単なる一時的なブーム。モンスターが好きで、その荒々しさとのコントラストをつけるために女性を選ぶことが多かった。男性を作成するのも好き。年齢を重ねた人たちはおくってきたきた人生が見た目に反映されるのでバリエーションが多く、モチーフとして好き。

        Q:デジタル造形のテクスチャ。ZBrushで色を付けることが多い?

        A.多い。トゥーンシェーダー風のものをつけるのが多い。ポリペイント

        Q:出力してから修正したくなる時はあるか?

        A.造形面ではない。あえて言うなら、初期の1、2回は、細すぎて上手く出力出来ずに修正した程度。

        基本的に立体化する時にどうすれば立つのか意識して制作している。

        Q:フリーランスでもやっていけたと思うが、今の会社に就職しようと思った理由は?

        A.会社でやることと、個人でやることは結構違う。作り方、学べる事、全部違う。良き経験

        Q:リファレンス集めによく使うサイトは?

        A.Pintrestが多い。あとはGoogle。
        Pintrestは完成されたものが多い印象。Googleは生々しい画像を探しやすい。

        Q:クライアントワーク。SNSでみれるものある?

        A.ArtStationにある。
        参考例えばこちら「Concept X」
        https://badzr.artstation.com/projects/OmbaPb?album_id=3849480

        受講して

        とにかく眼福でした。

        学び自体も多かったのかもしれませんが、各作品の創作時の思考、制作工程を見聞きする機会もなかなか無いのでとても興味深く、感心しました。なんていうのか、美術館や展示会をめぐった時のような気分です。ただただ別次元の世界を見ているというかなんというか。

        moco

        進行していたCGWORLDご担当者様も解説や質問・回答へのフォローが、さりげなくもとても分かりやすかったです。ナイスフォロー

        素敵な講座ありがとうございました。

         

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