学生&アニメーター必見!アニメーターシニア4 座談会に行ってきました 前編

2018年4月21日(土)にボーンデジタル主催で行われたAnimator Senior 4 -アニメーターシニア4 座談会に行ってきました。そのレポートです。

 

ハッシュタグは

 

飲み屋でざっくらんにアニメーションについて語り合う雰囲気を持っていきたい。

15年~20年と同じぐらいのキャリアを積みつつ、立場や所属環境の異なるそれぞれの目線から、テーマについて話が出来たら。

 

といったコンセプトの下、中堅より頭一つ出た経験豊富な方々によるCG業界についての話を聞くことができました。

 

さすがに大人の事情により、飲み会のようなディープな裏話を聞けることはありませんでしたが、これからこの業界を目指す人、これから自分自身の成長を願う人、中堅となり人を育てる立場に立とうという人、これからの日本の会社の理想在り方を模索する人にはとても有意義かつ面白い話を伺うことができました。

 

詳細な内容はボーンデジタルさんが公式に出してくれるでしょう。

 

このテーマについてはこの話!というきっちりした感じではなく、一つのテーマを基に枝葉して関連する内容を色々話していたのでここでは、セミナーのメモを基に個人的にかみ砕いた内容を残したいと思います。

 

前半は

シニアアニメーターがどのようなキャリアを積み、いかアニメーションを学び、人に教え、どのようにモチベーションを維持しているか

をまとめました。

 

ニュアンスが異なっていたらごめんなさい。

 2018年4月時点の情報です。

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セミナー概要

シニアアニメーター4名による座談会が開催決定! 経験豊富な4名がアニメーターの「過去」、「現在」、「未来」について今後の日本のアニメーション業界をどう盛り上げていくかを考えていきます。中堅アニメーターならではの立場から考える今後の業界や、目標、そして、若い世代のアニメーター、又はそれを目指す方達への指針等を話し合っていきます。

という説明の通り
「過去」「現在」「未来」の3項目について、事前アンケートを基にしたテーマの中からいくつかをピックアップして語り合うものでした。

長くなるので2分割予定です。まずは前半。

 

「過去」~「現在」(一部)

登壇者

並木貞久氏(Blizzard Entertainment )
田中剛氏(株式会社アニマ)
得丸尚人氏(フリーランスアニメーター)
島田寛志氏(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ)

自己紹介とこれまでのキャリア

登壇者のこれまでのキャリアがあってのセミナーでの話だったため、簡単にですがざっと。

並木氏

2000年から3年間、スクウェア・ソフト(現在のスクウェア・エニックス)、その後2003年に渡米。小規模ゲームスタジオを経て、2006年~現在ブリザード・エンターテインメント所属。

田中氏

複数のゲーム会社を経て、タツノコプロダクションにて映像制作に移行。

セガ、マーザアニメーションプラネット株式会社などを経て、現在株式会社アニマに在籍。

得丸氏

2D 動画出身。ゲーム会社でドット絵制作など経てCGへ移行。2003年~2010年まで渡米。

以降日本に帰国してからはフリーランスとして様々な会社の仕事を手掛ける

島田氏

2006年~現在までポリゴン・ピクチュアズに在籍。アニメーション部部長。

会社所属とフリーランスの違い。メリット・デメリット

会社所属のメリット・デメリット

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色々と守られている。
他部署との連携がしやすい。
仲間・ライバルが多く、刺激になる。
規模の大きなプロジェクトが出来る

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守られていることによる甘え(?)が出てくる

フリーランスのメリット・デメリット


ダイレクトに自分の仕事がクライアントに見てもらえる。

常に緊張感がある。

ディレクターの好みを察知する力が高まる

セルフマネージメントが高い、高くなる!

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全てを一人でやらなければならない

初めからフリーランスというのはおススメできない

現在フリーランスをされている得丸さんは、もともとの経験・人脈があったので帰国後も営業活動等を行うことなくフリーランスとして活動できたそう。

 

フリーランスには経験・実績・人脈が必要で、それがなければ(なくとも)デモリールを作成し、地道な営業活動をしなければなりません。

 

会社側としても未知な人材(フリーランス)を採用するのは慎重にならざるを得ないのでどこかしらで経験を積んでからフリーランスとして活動するのがおすすめです。

発信することの大切さ

今のようにtwitterやArtstationなどのSNSや海外へ働くアーティストの情報がなかった時、並木さん、得丸さんは海外で働きたい希望をもって、模索・行動を起こしていました。

(デモリールをVHSに録画してピクサーに送り付けた、海外で働く日本人アーティストのメルアドを勝手に想像してメールを出したなどw)

 

その行動が直接採用に結び付いたわけではないですが、

常に海外に行きたいことを周囲に発信し続けていたおかげで、知人づてで、日本人クリエイターを探す海外の会社を紹介されたそう

 

やりたいことを発信し続けることはとても大事

 

そういう意味では現在はTwitter等気軽にコミュニケーションや作品を発表する場が数多くあり、海外で働くアーティストたちによるオンラインセミナーなど、恵まれた環境があるので活用していきましょう

どのようにアニメーションを学んだか・学ぶ姿勢とは

基本的には現場。

 

 海外と日本の教育環境の違い

海外と日本ではそもそも教育環境が異なり、日本の学校場合はCGを一通り触ることで終わる所が多く、アニメーションに特化した学校は少ないです(特に昔は)。
海外の学校ではスーバーバイザー(以降SV)など人に教える立場の人が教えるのでポイントを抑えた実践的な内容となっている

 

そのため、基本的に日本では現場で自ら積極的に吸収するしかありません。

具体的な方法

  • 上手い人のデータを見る、触る
  • 感覚でやっている上手いアーティストの作業を自分で論理化・かみ砕いて理解する
  • 現在であればオンラインスクールを併用する

 

余談ですが、2D出身の得丸さんは小学生の頃からTV画面を止めては紙にポーズをトレースしていたそうです。

受け身になるな!

オンラインスクールや情報発信をしてくれるアーティストが増えたおかげで、アニメーションに限らず様々なCGの情報がすぐに手に入る時代になりました。

それに甘んじて、情報を得た=スキルを得たと勘違いし、また情報に対して受け身になりがちです。

 

例えばアニメーションの基礎が詰まったバウンシングボール。

 

お手本のとおり上手くバウンスするボールを作るのが目的ではありません。

 

そうではなく、その制作過程から何を得るかが大事で、例えボールが四角に変わっても同じものが作れる応用力を身に着けることが大事なんです。

 

巷の情報は自ら試行錯誤している経験があるからこそ腑に落ちるもので、自分で咀嚼して身になるものです。

 

そのことを理解した上で積極的に情報収集・実践していきましょう。

能動的に動く人には皆優しい

積極的に聞いてくる、意見を求めてくる姿勢はシニア側もうれしいし、円滑に質疑応答できる関係を築きたいと思っている

 

SVやディレクター、先輩という立場からすると、今困っているのか、試行錯誤している途中なのかの判断が出来ず、声をかけて良い状況なのかわかりにくいです。

 

そのため、作業者側からどんどん積極的に動いてほしいという願いがあります。

 

積極的に動く人にはどんどん教えたくなるし、チャンスも与えたくなるという思いは登壇者皆さんが持っていました。

 

もちろんそのためには、聞きやすい・答えやすい雰囲気や制作体制などの環境づくりが会社やシニアレベルの人たちには必須とも言えます。

リード・ディレクション(人に教える立場)で気を付けていること

基本的にどこも新人用のカリキュラムを用意しているわけではないので、やる気さえあれば自ら成長できる環境を整備することが会社・中堅の役割です。

すぐに聞ける・答えやすい環境を作る

基本的に入社する方々は優秀な人が多い職場なので育てる必要がないというのが前提にあります。

 

それでも、すぐに聞ける担当のリード(先輩)をつける、社内勉強会を定期的に行う、言葉遣い他コミュニケーションを大切にし、聞きやすい雰囲気を作る努力をしているそうです。

人によって伝え方を変える

個人の性格・スキルなど総合的に判断して、伝え方を分ける必要があります。

 

長い付き合いのあるそこそこ経験のあるアーティストにはざっくりとした方向性のみ示し、自由度の高いフィードバックを返し、経験の浅いアーティストには制作に迷わないように具体的に指示をしていきます。

 

 アーティストには大きく2タイプ

  • 薄く積み上げる(細かにチェックをもらい、着々とゴールへ進めるタイプ)
  • 大きくジャブを打ってくる(ダイナミックに変更を加えてから、ゴールへすり合わせるタイプ)

 

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ちなみに私は後者タイプです。
面倒なので大きく変更を加えた方が終着点が見えやすいと考えています

 

各個人をよく見ている必要があり、定期的に良い所・改善した方がよい所をフィードバックするときにも役に立ちます。

具体的な言葉・指示を出す

「かっこよくして!」のようなアバウトな指示はNGで、具体的にどこがディレクターや自分の考えと違っているか(タイミングなのか、スペーシングなのか、ポージングなのか、レイアウトなのかなど)を具体的に示すことで、迷いなく作業に取り掛かれるように導くことが大事。

 

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スペーシング一つとってもあと〇F程度伸ばしたい、もっとメリハリをはっきりさせたいので、〇Fぐらいからあと2~3F抜きましょう。といった具体性ですかね。

 

 

可能であればリアルタイムで修正・作業状況を見せてあげる(デスクトップキャプチャでも可)が効果的。

モチベーションの保ち方・上げ方・上がるとき

慣れというのはモチベーションを維持するには怖い存在で、そんな中でモチベーションをどのように維持しているかという話。一部シニア視点でのモチベーションの上げ方もあります。

 

  • プロジェクトごとに自分的な課題を決める
  • 海外のすごいトレーラー、優秀な人のデータや作業を見て、危機感を募らせる
  • 周りのスタッフのモチベーションをいかに上げられるか、いかに楽しんで仕事に打ち込んでもらえるかを考える・実行する。(自分の中での課題)チームのリーディングも楽しい。
  • チャンスを与えた子が思わぬ良い結果を出してくれた時
  • マンネリ化にならないように常に人や新しい環境を入れて、刺激する
  • SVをやっていると手が動かせないでストレスがたまるので、たまに中堅をSVに据え、その下につく

 

中には、特にモチベーションが下がらない、意識したことはない、という方もいましたが突き詰めてきいていくと、社内作品で刺激を受ける出来なくて気落ちするけど、そこからできた時の快感で相殺(又はプラス)に気分が働いているということでした。

前半まとめ:成長する環境作りの大切さ

自分自身が成長するためにも・周りに成長を促すためにも環境づくりというものの重要性を再認識しました。

 

中小CG会社では本当に余力がなく、いかに人と時間を捻出するかが課題だなと思いました。

目の前の仕事でいっぱいです。

 

次回は後半。

モーションキャプチャ(以降モキャプ)VS手付けアニメーション!?モキャプと手付けの住み分けとは。

シニアが思う日本のCG会社の未来の課題。

アニメーターの今後の課題。

 

についてまとめたいと思います。

 

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