卒園を控える年長クラスの次男の懇談会で行われた、現役小学校教員による「小学校入学に向けて本当に大切なこと」の学習会内容のメモ。
1時間にも満たない短い時間ではありましたが、学校の制度や講師の20年の教員キャリアをもとにした実体験、保護者の不安などに応えてくれる濃密な学習会でした。
- 初めての就学にどのよな心構えでいればよいのだろうか
- ネットでは色々なやっておいた方がよいことが流れてくるが子供が興味を持たないが大丈夫だろうか
という不安な方に向けて
この記事では
fa-check-circle-o講習内容
fa-check-circle-o保護者からQ&A
をまとめています。保護者からのQ&Aはあるあるな質問ばかりだと思いますので必見です!
- 就学を控えたお子さんをお持ちの方
・保護者に対して簡潔にかみ砕いた説明がなされているので、実際の用語等のニュアンスと異なる点があるかもしれません。(私のまとめ方の問題の可能性もあり)
・情報は必要に応じて調べ、自ら取捨選択してください。
今回の講師
講師とは言え、保育園に子どもを通わせる保護者でもあるので個人名は伏せます。
- 現役公立小学校教員(キャリア20年以上)
- 大学の非常勤講師
- 書籍も発行
- 全国を回って教育についての講習をしている
入学説明会
就学前の説明会では、入学前に出来ておいた方がよい生活習慣や学習について説明されます。
小学校の説明会でも絶対に出来ておかなければならないわけではないというのは大前提で語られてありますが、我が子が出来ていない・興味を持たないとプレッシャーがかかってしまいますよね。そんな保護者への不安について
関連記事長男の時にも当然説明されました
公教育とは0から教えていくこと
- やっておいた方が良いリストにはそれぞれ学校生活をスムーズにスタートための理由があるが、100パーセントでなくてよい。やってくれたらラッキーぐらいの気持ちでしている
- 学校も出来なくて当然で始めるので安心していい。そのための公教育。
本当に必要な3つこと
沢山リストがあるが一番大事なポイントは3つ
- 困ったときに助けを求めることができる
- 出来ないことは「できない」ということができる
- やりたくないことは「やりたくない」ということができる
出来ない、やれないことがある、その事実を共有されることで解決策を模索することができる。
無下に切り捨てるようなことは絶対にしません
「親学講座」がある学校もあるが気にしない
親子のかかわり方、親の在り方、親とはいうのはこういうものだという講習を学校もある。
特別支援学級とインクルーシブ教育
特別支援学級とインクルーシブ教育についての話もありました。
インクルーシブ教育とは
超平たく言ってしまえば、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指す共生社会の形成をめざす社会が求められているし、学校でもそのように体制を変えていきましょうという風潮がある。
■こんな感じの図解で解説されました
インクルーシブ教育とは、これまでの「障害のある子どもたちと、それ以外の子どもたちとを隔てて教育する」という概念を覆す教育方法で、2006年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」で示されたものです。
障害のある子どもも、ない子どもも、共に教育を受けることで、「共生社会」の実現を目指しています。子どもたちの多様性を尊重し、障害のある子どもが精神的にも、身体的にも最大限まで発達できるよう、また、社会に他の子どもと変わらず参加できるように支援していく教育方針です。
重要なのは、それぞれの子どもたちが授業内容を理解し、「授業に参加している、ついていけている」という実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごせること、という点にあるでしょう。
いくら障害のある子どもたちを通常学級に在籍させても、その子どもたちが授業を理解できず、孤立感を抱いてしまってはまったく意味がないのです。
参考
文部科学省 特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告>1.共生社会の形成に向けて
通級指導教室・特別支援教室・特別支援学校がある
障害を抱える子にはいくつかの方針が示されます。
■通級指導教室
通級指導教室とは、通常の学級に在籍しながら週数回程度、「通級による指導」という特別の指導を受ける教室です。
障害の程度が比較的軽度であること、在籍クラスが通常の学級であるところが、特別支援学級との大きな違いです。ただし、通級による指導は在籍校で受けられるとは限りません。別の学校に移動するケースも多くあります。
■特別支援教室
特別支援教室は、通常の学級に在籍しながら週数回程度、在籍する学校で特別の指導を受ける教室です。
通級指導教室と似ていますが、特別支援教室は在籍校で指導を受けることができ、子どもが別の学校に移動をする必要がありません。担当教員がその子どもの在籍校に巡回し指導するためです。特別支援学級との違いは、通級指導教室と同様、障害の程度が比較的軽度であること、在籍クラスが通常の学級であるところです。
東京都の公立小学校では2018年度に全校導入されました。公立中学校や他地域でも導入が広がっています。
■特別支援学校
特別支援学校とは、心身に障害のある子どもが通う学校です。
幼稚部・小学部・中学部・高等部があり、それぞれ幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準じた教育に加えて、自立に向けた知識・技能を学びます。特別支援学校の学習指導要領は、小学校・中学校の学習指導要領と異なります。特別支援学級では、実態に応じてどちらの学習指導要領も組み合わせて使うことができます。
通常学級→特別支援学級への判断は慎重に
上記どおり、知的に障害のある子に関しては福祉の観点からの専門フォローが必要ですが、知的に問題のない子供を特別支援学級に進ませようとする際には慎重な判断が必要。
- 学習指導要綱を要確認
- 成長した際の進学、就学先の選択肢を要確認
可能であれば通常学級で踏ん張れる選択肢を選んでほしいです
「合理的配慮の提供を要求することが出来る」事を知っておきましょう
日本では、障害を「社会モデル」(社会や環境の問題)ではなく、いまだに「医学モデル」(個人の問題)としてとらえていることが多い。
参考社会モデルと医学モデルの考え方をわかりやすく解説しているサイト
そのため、障がい者差別を解消するための法律が施行され、学校にも「合理的配慮の提供を要求」することが出来るようになりました。
合理的配慮とは、障害のある方々の人権が障害のない方々と同じように保障されるとともに、教育や就業、その他社会生活において平等に参加できるよう、それぞれの障害特性や困りごとに合わせておこなわれる配慮のことです。2016年4月に施行された「障害者差別解消法 (正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」により、この合理的配慮を可能な限り提供することが、行政・学校・企業などの事業者に求められるようになります。
とはいえ、なんでもかんでも要求が通るわけではありません。
合理的配慮の事例に関しては多く示されているので各サイトでご確認ください。
参考小学校の合理的配慮の事例
学校における「合理的配慮」の提供 -千葉県(PDF)
合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)
一緒に考えていきましょうのスタンスで
困ったことがあればまずは担任に相談を。
- ただ問題が起こった際にVS学校(担任)と対立気味に迫ってくる保護者がいる。
- 教師も人間。強く当たってこられると、頑なになってしまう人もいる。
- ぜひ、共に問題解決をしていきましょうのスタンスでいてほしい
保護者からのQ&A
今回の学習会にあたって事前に保護者からの質問募集がありました。
それについて答える時間。
Q.和式トイレできるかが心配
学校でも和式トイレの使い方を最初に教える。練習していて損はないが、無理やりやらせるほどでもない。
- 今の子は筋力的に和式トイレのスタイル(しゃがむ)ことができない子も多く、小学校でも洋式トイレの導入が進んでいる(都内はほとんど洋式)
- 和式トイレが嫌で、トイレを我慢・おもらしをしてしまうケースもある
本当に必要なことでも言った
- 困ったときに助けを求めることができる
- 出来ないことは「できない」ということができる
- やりたくないことは「やりたくない」ということができる
につながってくる。
- トイレに行きたいがいけない
- しゃがめない
- どうしても和式が嫌
等
それを子供自身が言えればよいですが、気づいた親が担任に相談してほしい。
Q.牛乳が飲めない
問題なし。担任に報告を。
今はアレルギーの問題もあり、柔軟に対応しています。体質的に牛乳が飲めない場合もあるのでその場合は担任や学校に必ず報告を。
場合によっては牛乳分給食費が安くなるケースも。
Q.ひらがなの学習やってない・子が興味を持たない
問題なし。学校で教えていく
クラスに2,3人はいる。1年生であいうえおを順にしっかり教えていきます。
強制すると勉強が嫌なものになるうえ、先取りは学ぶワクワク感が減ってしまう。
ワクワクは勉強の大事なエネルギー。
Q.泳げません
問題ありません。泳げない子は沢山いる
ただプールが嫌で学校が嫌になる場合があるので、水に慣れておくのはよいとは思う。
Q.コロナの影響は
家庭や子によってさまざまなので一概には言えない。
触覚過敏の子などは大変だと聞く。不安なことがあればとにかく相談を。
Q.我が子がどんくさく、集団行動できるか不安。家でも何か対応した方がよいか
家でまで言われたら荒れる。ありのままを受け入れて
子供はどこかしらでバランスをとっている。
最近内地蔵、外弁慶が増えている。家ではのびのびとさせてほしい。
のびのびと「遊びきる」体験をしてきた子どもたちは、スタートこそ小学校に馴染むのに苦労することもあるが、そのあとのリカバリー力がスゴイ。
Q.おすすめの習い事
本人の希望次第ではあるが、あえて言うなら水泳と習字。
学校での水泳の時間は多く取れない(少ない授業時間も天候次第で更に減る場合も有)、また教える教員側もそこまで専門的な対応は出来ないという理由から。
習字は過去の教え子たちの声から。習字習っておいて(文字がきれいで)よかったという声多し。
習字を習っていた経験があっても、普段の字がイマイチな例を身近でみているので
一概に習字やっている=字がキレイ
というわけではないことにご注意
Q.学童に慣れるか心配
出来れば子どもと共に見学してきめる
- そうは言っても通ってみないと相性は分からない
- 学童拒否になってしまう子もいる
- 学童拒否になった場合は、他の学童にも相談する(稀な例ではあるが移動が可能なことも)
Q.いじめが心配
気になることがあれば担任に相談
- タブレット導入により、見えないいじめも増えている。
- 教員より子供の方がタブレットを使いこなしていることも少なくなく、裏サイトを作成してそこで悪口を書くなど手がこんできている
- こどもが使用しているタブレットやPCの中身もよく確認してください
相談して頂ければ注視することもできるので、連絡帳ででもどんな形でも相談してください
いじめる側のストレスを探る
講師の先生のスタンスはいじめがあった場合、「いじめる側のストレス要因を探る」と事を重視している。
これまでの経験から、ストレスフリーな子がいじめをするケースはほとんどない。原因を突き詰めると、いじめる子がストレスを抱え、そのはけ口にいじめをしている場合が多い。根本的な原因を解決しないことにはいじめがなくならないと考える。
■ストレス要因の例
いじめ←いじめる子(虐待、過度なプレッシャー等)←親や家庭(貧困、不和、過干渉な教育等)←社会
最後に
これから就学前の説明会で色々言われるかと思いますが、振り回されることも、落ち込むこともなく、「何かあれば相談しよう」という気楽な気持ちで構えていてください。
とこの人神かなと思うような〆で学習会を終えました。すでに長男が小学校に通っているので気楽に聞いていましたが、とても学びの多い懇談会でした。
発達障害や学校の仕組みに対しての保護者の勉強不足が否めないというのが率直な感想でした。私も全く知らなかったです。
とてもデリケートな問題なので、当事者でもない人間には理解しきれていない部分が多いですが、それでも学校の取り組みや制度に対しての当事者以外の理解が大事だということも分かりました。
ぜひ多くの小学校でこのような講習を入学前説明会で行ってほしいと願ってやみません。